今日は、朝から Milano Salone のメイン会場の Fiera Campionaria 国際見本市会場に。朝イチだったためか、地下鉄は東京の通勤ラッシュなみの満員。
ひろいっ。でかいっ。あ〜ちょっとあなどっていた。実は、今、やらないといけないコトがいっぱいあったから「3泊もすんじゃなかったなぁ、2泊でさらっと見て帰ればよかったかなぁ」とか思ってた…けど、ムリ、でかすぎっ。この会場だけでも1日つぶれてしまいそう。
とにかく頑張って歩いて、Classic以外は(会場はModern、Design、Classicに分かれてる)全部まわってみた。最初は、けっこう面白かったんだけど、ものすごい数を見ているうちに何がなんだか分からなくなってきた…(笑)。
ロンドンでも、Harrodsとか、Selfridgesとかのインテリアコーナーにたまに行ったりすると、けっこう楽しいんだけど、あれがもう、無限に続く感じ。だんだん何がいいだか、どれが好きなんだかも分からなくなってきた。でも、これだけ大量に見ると、個々のデザインがどうとかいう感覚は僕のアタマの処理能力的に溢れちゃってるけど、そのかわりに見えるものもあるかも。
僕が感じた新しい(と言われる)デザインに共通するモノ、ホントは矛盾しそうなんだけど、「innocentな、でもintelligentなテイスト」。そう、ただ「テイスト」ってだけ。
例えば、真っ赤なソファ…「鮮やかな赤の美しさに感動する素直なキモチを、無垢な感受性を大切にしたいんです。いいじゃないですか、キレイなんだから。素直に表現すれば」…で、こうなりました♪
例えば、奇抜な構造のイス…「ちょっと驚くでしょ?いや、でもコレ、この部分がこういうふうに力を分散して構造的にはちゃんともつんですよ。ぱっと見、不思議でしょ? もちろんスタッカブルですよ。軽いしね、プラスチックなんです。」…で、こんなんでましたけど♪
みたいな。おなかいっぱいです。
自分のinnocenceを確認したい、のは今の時代の雰囲気かも。今、Saloneに来ている、またはここに並んでいるfurnitureをデザインしている、またはそれを買うだろう人々は、おそらく全員が、「今の世界の80%の富を握っているたった20%」の金持ちクラブのメンバーで、善良であればあるほど、知性があればあるほど、ちょっとヤマシイような、罪の意識があるんじゃないかな。これだけメディアにさらされる現代人なら、どれだけ目を背けても、もう半分の世界の不幸を知らずに過ごすことはできないし、かといって手を差しのべもしない。自分には何もできない、でも悪意はなんだよ、自分なりに精一杯やってるんだよ…、そんな自分の無垢な感受性を、innocenceを確認するために買うデザイン。
そして一方では、innocentなだけでは、生きていけない現実。知性を武器に「金持ちクラブ」の中を生き抜くために、「アートやデザインを理解する自分」を確認するような、「理にかなった新しさを受け入れる自分の合理性」を確認するような、インテリ願望とか。
どっちも、不安な時代の空気の裏返しかも。誰かが冗談で言ってた「今、ミラノでテロが起こったら、世界中でデザイナーがいなくなるかも。ま、デザイナー殺しても意味ないか…(笑)」。でも、目をそらして、そんなのありっこない、と思いたくても、これだけ人が集まれば、テロの標的になってもおかしくないのが現実。そんな、無意識の奥に漠然とした不安感が横たわるのが時代の空気なんじゃないかなぁ。
とはいえ、過去のどこかの時代と比べて、現代が特別に危険な時代だとは思わない。ただ、個人がこれだけ膨大な情報にさらされる時代はなかったろうから、それが潜在的な価値観に影響を与えていても不思議じゃないなぁ、と。
でも、Fieraで大量に見たのは、ただそういうテイストってだけのモノ。たとえば、 Nickのinflate みたいに(チューターだからゴマするわけじゃないけど(笑))、「学生時代の何もない時に、この機械と偶然巡り会って…」みたいな、ストーリィがあって初めてちょっとinnocentさを感じるけど、「金持ちクラブ」代表みたいなデザイナーに「ワシってなんてinnocent♪」なんて言われても、あざといだけだし、すでに何千種類の椅子がデザインされているのに、さらに新しいデザインの椅子を売ろうとする行為自体が、ぜんぜんintelligentな感じがしない。
もちろん、マーケティング的には「アリ」なんだと思う。おっきなマーケットであることは確かだし。学生の中にも「自分の中のinnocence探し」をデザインにしてる感じの人もいるかもしれない。でも僕のやりたいのはちょっと違うかなぁ。メディアと情報の洪水の中で、ココロがちょっと疲れたり擦り切れたりしてる人に、ほんとうに「あるといいもの」は、ニセモノのinnocenceやintelligenceじゃなくて、他にあるんじゃないか、と思う。
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