先月のコトだけど、めったに顔を見せないNickが、急に張り切って「明日は、朝からミーティングやるぞ。 Canteenに集合だ!1日中かかるからなっ」みたいなメールをよこした。チュートリアルを集中的にやるのかと思っていったら、いつもは時間どおりに来たことのないNickがもう来ていて、パンパンにふくらんだバックパックを抱えてニヤニヤしてる。「お前ら驚くかもよ〜」(雰囲気です…(笑))。
そんなカンジで始まった突然の1Dayプロジェクト。2人づつのグループに分かれると、 Nickがバックパックから(ご丁寧にも♪)銀色の包み紙にラッピングした品物を渡す。中身はそれぞれ違うモノが2つづつ入っていて、お題は「与えられた2つのものから発想してプロダクトを作る。さらにそれは(各自、事前に選んだ)数字の数だけ量産しないといけない」。
ウチのグループは、ゴーグル(作業用?)と、ノコギリの角度を固定する木枠(何て言うんだろ?)。で、それから発想したもを4個。コレ、意外と大変。アイデアってそんなに都合良く思いつかないし、夕方までに実際に作れないといけないし。製作作業時間も計算しとかないといけないし…。
で、結局、僕らが作ったのは、写真の「壁掛けソルト&ペッパーケース」。「刃を固定する」木枠のかわりに、「刃で固定する」って訳(ちょっと苦しいけど…。それにゴーグルはどっかいってるし…)。4個のところを5個作ったので、プレゼンでは「今日なら Buy 4 Get 1 Free だよ」とか言ってちょっとウケを狙ってみたり(苦笑)。
ウチ以外はもっと数が多いはずだったんだけど、ほとんどその数を作れたグループはなくって、Nickはそれが不満そうだった。今日のプロジェクトは数を作ることにも意味があるんだ。時間的な制約のある中で、作業時間を考えてアイデアの落としどころを決めて、製作効率を考えたデザインをして、実際に複数作ることに意味があるんだ、と。きっと、普段、彼が感じてるデザイナーの置かれてる現実、みたいなものを体験させようとしたのかも…。(いつになく「教育的」じゃないか!(失礼;笑))
しかし…。eat meもそうだけど、最近思うのは、デザインっていうか「アイデア大会」みたいなモノばっかじゃないか、と。ココに来る前はデザインっていうと、もっと造形的なコトとかをやる(もちろんそればかりじゃないけど)イメージだったけど、そういう議論はほとんどない。もちろん、RCAはGuraduate Schoolなので、そういうのはできで当然っていう(オレはできませんが…)コトなんだろうけど、造形的美しさ、みたいな話はホントにない。ていうか、そういうのをやろうとすると否定されたりする雰囲気(ウチのグループでも、eat meで食器をテーマにしようとしてたらChristophに「キレイなcutleryとか、カッコいいtablewareとかはタブーだから」とか言われて困ってた子がいた)。
僕は造形的なもの以外のものを中心にやりたかったから、それはいいんだけど、でも、そうなの?プロダクトデザインってそういうものなの?…とちょっと思う。だってプロダクトデザインを勉強してみようと思って本を読んだりすると、やっぱりメインは造形的なこと(もちろん、そのカタチに意味があるんだけど)。ちょっとギャップを感じる。ここで求められるのは新しさや、アートっぽさ。「そういうのは、もうある」とか、すぐに言われちゃうしね(苦笑)。 poeticな、もしくはfunnyな要素があるとポイント高い。そうかぁ?そうなのかぁ? …コレじゃなんかノリ的に「発明将軍」みたいじゃないか?(古いか?(笑))
でも、このへんの「何がいいプロダクトデザインなの」ってのは、きっと自分自身デザイナーとして奮闘してるNickやChristophもよく分かってなくってもがいてるんじゃないかな、と思う(センセイつかまえてエラそうですが…)。モノが溢れてる時代に差異化するのって大変だから、いかに目立つかってカンジだよなぁ。だから、彼らは新しい素材とか、製法とか、技術とかを必死になって探してるみたいだ。そりゃ新しい製法を一番先に使えば新しいモノにはなるよな。だから「この技術は業務用ではあるけど、一般向けにはまだないみたい」とか、「普通はこう使うものなんだけど、こういう用途で使ってみた」みたいな案には反応がいい(笑)。だから学生側も結構、それがちょっとパターンになりつつあるってるっぽい。でもね、そうなの?ホントに?
ま、新しい新しくないの議論に落ちちゃうのは、僕の英語力が足りなくって深い議論に入っていけてないだけかもしれないけど…。(いずれにしても造形的なことは自分で勉強しなきゃ)
とか考えながら気になったのが、Wiredの"Revenge of the Right Brain"。
これからは「右脳の時代だ」って訳だけど、その理由が、 左脳的専門性(プログラマー、法律の専門家…)のITによる効率化とAsiaを中心としたオフショアに流れること。左脳的生産活動が生み出す物質的豊かさが飽和して、感性に訴えるものが必要とされること(アメリカでのcandleは年間$20億のビジネス)。P.F.ドラッカーのいう、まさに知識労働者(Knowledge Worker)がここではピンチに。
右脳、左脳とか言うのは、まあ、モノは言いようってカンジだけど、「知識に頼る専門性」っていうのは、どんどん安い労働力を提供できる国に流れるっていうのはそうだろう(それ自体すごく新しい議論ではない気がするけど)。
プロダクトデザインも形式知化されてしまえば同じ、そう思えば、「アイデア大会」やってるのも、なんかこう、必死で右脳的「何か」を探してるんだ、と思えなくもない…。
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地味な(失礼;)ところから勉強中…
モダン・デザインの展開―モリスからグロピウスまで ニコラス ペヴスナー Nicolaus Pevsner 白石 博三 みすず書房 1957-06 by G-Tools |
あと、図書館で見つけた、Coffee Tableの本。かなり楽しい! しかし、ちゃんと80-90年代の代表的作品として、Ronも、Nickも、Jarszyもちゃんと取り上げられてるのがスゴい!(やっぱスゴい場所にいさてもらってるんだなぁ、今…)
The Coffee Table Coffee Table Book Alexander Payne James Zemaitis Black Dog Pub Ltd 2003-11-01 by G-Tools |
そして、それでも示唆に富む
ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる P・F・ドラッカー 上田 惇生 ダイヤモンド社 2002-05-24 by G-Tools |
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