ときどき、自分が作ろうとしてるもの(=JM)が、ものすごくつまらないモノのような気がして、ど〜んと落ち込む時がある。 ただテーブルにディスプレイを埋め込んだだけじゃないのか?昔のインベーダーゲーム(古いな、ゼビウスとか(笑)…それも古いっ)みたいなもんじゃないか?…と。
Ronには始める前から見透かされていて、「で、それはアレか、画面がついてるのか?」「は、はい。そうなると思います」「じゃ、アレか、キーボードとかもついてたりするのか?」「ぁ、いや、キーボードはないと思いますけど…、でもなにかしらインタラクションは必要だと思うので、ユーザーインターフェースはあると思います」「ふ〜ん…」(そんなカンジ)。
いや、そうなんだけど。たしかに。
でも、ホントにやりたいのは「カタチじゃないもの」。
coffee tableを選んでる一つの理由は、無名furnitureの代表として。coffee tableて、別に特別にコーヒーが飲みやすいような仕掛けがあるわけじゃなくて、いちばん「『ただの』テーブル」に近いかな、と思って。新しい価値を提供するのは「カタチある部分」じゃないんじゃないかと。新しい価値はインタラクションを通じて提供される。もちろん、JM coffee tableの「カタチ」の部分は、今までどおりの価値(その上にモノを置ける、とか)も提供するんだけど。それはもう、ありふれてる。
僕はiPodは2代目の時(まだメカニカルホイールの頃)に買ったけど、欲しかったのはあのカタチじゃなかった(カタチも「悪くなかった」コトが重要だけど)。会社に行く時に、ドライブに出かける時に、持って行くCD(やMD)を毎回選ぶ煩わしさ、そしていざ聞こうと思うとないもどかしさ(「ぁ。クルマにおきっぱなしだ!」とか)から解放されたかったから。そして実際、解放された。その「仕組み」がプロダクトデザインじゃないか、と思うんだけど(たぶん、一般的には違うかも…)。
「仕組み」が物理的・機械的なものばかりの頃は分かり易かったと思う。「これは折り畳めるテーブルです。ホラね」とか「この椅子はスタッカブルです。しかも軽い!」とか。カタチ=デザインと「美しさ」の関係も、直接的で、「いいデザイン」を追求するデザイナーは「美しさ」を追求するアーティスト気分を味わえたのかも(現実には制約が多いとしても)。でも、もうかなり長い時間をかけて物理的・機械的仕組みで価値を生むパターンはやりつくされていて、まだ可能性はあるにはあるんだろうけど、その残りの領域ってすごく難しくて僕にはなかなか手が出せそうにない(でも、実際ここ(RCA/DP)ではそれを目指してすごくハイレベルの競争が行われていて、「あぁ、まだそんな手があったかぁ〜」と感心させられることも多いけど)。
一方、エレクトロニクスや ITはまだ歴史も浅くて、まだまだ可能性があるはず。とくに最近の早い技術革新は、技術が先行してその価値が十分こなれたところまでデザインされきれてないんじゃないか、と思う。で、それを僕はやんないといけないんじゃないか、と。でも、こっちは本質的にカタチのないもの(しいて言えば仕様?)だから、カタチのないものの「美しさ」ってなんだ? JM coffee tableをいくら美しく、カッコよく作っても、その部分が提供するのは「今までどおりの価値」の部分で、「新しい価値」の部分じゃないし。ただ、まわりの学生は僕みたいな悩みを持ってる風ではないので、なんか時々ひどく孤独な感じがする。うちのplatformのある2年生とiPodについて話した時も彼は、「iPodの良さはスクロールホイールを中心とした(物理的な)ユーザーインターフェイスのデザインだ」って言ってた。カタチだ。そうなのかなぁ、みんなそう信じてるのかなぁ。そういえばBRAUNのPeter Schneiderも、(今もまだ)「機能美」みたいなコトを言ってたなぁ。
ちょっと前になるけど、おなじ会社の先輩でデザイナーの方と会った。たぶんその時も、こんな悩みを話したんだと思う。その人は「カタチがたとえその価値の本質じゃなくても、カタチはその価値を伝えるメッセージになる。特に、最初のデザイン提案をする時には、たとえ最終的にはもっと現実的でおとなしいデザインになるとしても、そのコンセプトを象徴するようなデザインにするもんだよ」と(正確じゃないけど、そんな感じだったような)。うん。それはきっとそうだ。
…と、そんなコトを考えてしまったのも、今日、ひさびさに学校に行って、例のcoffee tableにニスを塗ってみたら(もうちょっとfurnitureらしく見えるかと思って(笑))、なんか逆に「中学生の夏休みの工作」みたいになって、自分の「カタチ」デザインのヘボさ加減にがっかりしたからなんだけど(苦笑)。 (しかし、それにしては強烈に長い言い訳やなっ>オレ(笑))
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