語学研修(presessional course)の課題の一つ(Presentation Skill)に、「自分の作品を紹介する」というのがある。みんな結構その作品っていうのが本格的で感心したんだけど、僕はいわゆるデザイナーではないので「これ、ボクの作品です」と言えるようなものがなくて、ちょっと困った。エンジニアリングはチームワークだしね。そこで、これからやろうと(今のところ思っている)テーマについて少し話した(ポートフォリオにしてインタビューの時も説明したんだけど、学部長のRon Arad 大先生には「意味が分からん」と言われたけど(苦笑))。
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タイトルは「Redesigning of Creativity in Daily Life」、ちょっと英語的には怪しいんだけど…(それはそのうち…)。一言で言うと「『創ること』楽しさ」って、まだ可能性があるんじゃないか、と。広い意味で何かを「創る」喜びっていうのは、根源的、本能的なモノじゃないの?(もしくは例の利己的な遺伝子に仕組まれた?)今はクリエイターといえば特別な存在のイメージがあるけど、ヒトの潜在的な創造性っていうのは、まだ未開拓のフロンティアなんじゃないか、と。そろそろ機は熟しつつあってそれを阻んでいた障壁を崩せる状況になってきたんじゃないか?自分はクリエイティブじゃないと思っている多くの人の、クリエイティビティを解放できるじゃないかと…。
思えばコンテンツディストリビューションの歴史は、技術的イノベーションによる物理的コストの劇的な低減の繰り返しだったような…。もしも、宇多田ヒカルが(って例がおじさんっぽい?)江戸時代に生まれていたとしても、その才能は変わらなかったかもしれない(もちろん育ち方にもよりますが)、でもその歌声を全国行脚して100万人に聞かせるのは、途方もないコストがかかったに違いない。録音技術が発明されてコンテンツの複製が可能になって、その物理的コストは劇的に低下した。放送技術もそう。そしてIT、もう少しして一定のインフラが行き渡ったら、例えばコンテンツデータを配信する物理的コストはゼロに近くなってしまうのでは?もちろん、物理的コストだけで価値が決まる訳ではないので、そのコンテンツの価値をどう定義するかが重要なんだけど。
一方、コンテンツクリエーションにおいても同じく、遠近法*、写真、映画、…と様々なイノベーションを経て、近年では、ITがその制作コストを大きく引き下げたと思う。DTP,DTM,DTVの類いはクリエイターの裾野を大きく広げたと思うし、クリエイションの可能性も同時に広げたと思う。でも、まだそのコスト=障壁は高い、高止まりっていう感じ。Flashでアニメが作れるし、Premier でムービーが作れるけど、支払わないと行けない学習コストは、やっぱ普通のヒトには受け入れ難い高さだよね。でも、次のイノベーションがこれをグッと引き下げたら、そしてそれがある閾値を越えたら、すごく面白いことになるんじゃないかな、と。
*ちょっとそれるけど、遠近法といえば、マザッチオの「聖三位一体」(たしか)フィレンツェ中央駅の向かいの教会にあって、キリスト教の知識に乏しい僕でも当時の見た人の「気づき」をかすかに追体験できる貴重な場所。
でも、それには新しいアプローチが必要なんじゃないか、と。まずはクリエイティビティ、クリエイションの再発見。閾値を越えるってことは、これまでプロフェッショナルの世界だったところから、普通の生活の中に場を移す、ということ。マス&コマーシャルではない「Creativity in Daily Life」を再発見すること。映画作るだけがクリエイションじゃないはず。例えば、次の旅行の計画を「創る」のは?旅行に行く前が一番楽しいってヒトいるでしょ?で、旅行から帰って来たら、メモリカードいっぱいのデジカメ写真、あとはどっかにアップしてシェアするだけ?著作権フリー(じゃないけど正確には)のマテリアルがこれだけあれば、(少なくとも自分たちだけにとっては十分に面白い)何かできそうでしょ? …めちゃくちゃ面倒くさいからやらないけど。でも、面倒じゃなかったら? 旅行は非日常だけど、日常をそういう目で見始めたら? …と、このあたりが「Creativity in Daily Life」の再発見。
もう一つは、クリエイションのプロセスの再設計。「Creativity in Daily Life」を発見したら、それに最適なソリューションがあるはず、それが「Redesigning of Creativity」。目的が違えばソリューションも違う。プロフェッショナルのクリエイションは、マスをターゲットにすることと、クオリティが優先。「Creativity in Daily Life」では、コストの低さ(簡単さ)優先、自己満足、内輪ウケ結構。
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と、今日このあたりまでをプレゼンで紹介した。(僕の英語力的にどこまで伝わったかは不明…)
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最初の投稿にも書いたけど、ゼロサムゲームからは抜け出したいんだよね。そしてみんなが豊かになるには、みんなの生産性を上げるしかない気がして、特に知的生産性(=クリエイティビティ)のところが、まだまだ未開拓な気がする。プレゼン的には(分かりやすいので)、「創造の喜び」みたいなところにフォーカスしたけど、最終的にはそれが(自己満足だけじゃなくて)全体の知的生産性向上につながると思うんだよね(ま、それも例の「利己的なヤツ」に仕組まれてるのかもしれないけどね)。
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で、こういうことを実現するには、最近のバックエンド側のテクノロジーの進化が興味深い。(でもきっと大事なのは「edge of the network」だと思うんだけど…)
Googleの本質は新時代のコンピュータメーカ[梅田望夫・英語で読むITトレンド]
公開資料からかいま見えるGoogleのコンピュータシステム[梅田望夫・英語で読むITトレンド]
そして、僕も一部キャッシュ化され始めました。
”キャッシュ”化される人生[渡辺聡・情報化社会の航海図]
さらに、知的生産活動の結果をどう扱うかが大きな問題
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(実は画像をつかった引用をアフィリエイトにしてるのも、画像の著作権の扱いがよく分かってなくて不安だから…。べつに小金を稼ごうって訳でもないんです。ホ、ホントっすよっ。)
そして、直接関係ないけど僕らを操る「利己的なアイツ」
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