iPodをなくした?!
ホテル生活や引っ越しのバタバタでiPodをなくしたらしい! かなりショック。
このまま見つけられなかったら、買うしかない。 …「しかない?」
-
そう。完全にロックイン*されてる。値段とか音質とかバッテリーとか、全てにおいて最高だとは思はないけど、選択の余地はない。
なぜ?>自分
サウンドファイルのフォーマットはMP3だし、ファイル自体はiPodじゃなくてPowerbookのHDDで、その気になれば他のPC(Winノート)にも移せるし、自由じゃない? 何に縛られてるんだ?
答え:ユーザビリティ*に。
もうすっかり慣れてしまった。この操作性に。馴染んでしまった。同じことが他のやり方でできることは分かってるけど、調べれば分かるし、覚えられるけど、それに費やす時間、面倒くささに耐えられない。これが最大のスイッチングコスト。「慣れ」。
_
ロックイン戦略はこの「ネットワーク経済の法則」に詳しいけど…
「ネットワーク経済」の法則―アトム型産業からビット型産業へ…変革期を生き抜く72の指針 千本 倖生, カール・シャピロ, ハル R・バリアン, 宮本 喜一 発売日 1999/06 売り上げランキング 14,817 Amazonで詳しく見る |
フォーマットを争い、プラットフォームを握り、マーケットをロックインする。20世紀末の壮大なスケールのビジネス戦争…。
今では、みんな十分に学習したんじゃないのかな? 高い授業料を払って。そして警戒している。誰かが独占できるプロプライエタリな技術にマーケットがロックインされるのを。高いスイッチングコストがその陰にチラつくと、より慎重になる。これからはそういうのかなり難しくなるんだろうなぁ。
-
僕も警戒していたから、いつでも乗り換えられる、はず。でも、できない。それが「慣れ」。すでに、そうと知りながら多くの(学習)時間を自然と投資してしまった。それが内なるスイッチングコスト。でも、嫌悪感はない。いつでも代えられるんだから。でもそうしない。
この強力な仕組み、ユーザビリティもしくはユーザーエクスペリエンスによるロックイン。これから注目すべきはコレじゃないのかな? HDDミュージックプレイヤーの仕組みは分かる、でもその最初の体験がiPodだったから、そしてそれから1年もたってしまったから、他の選択肢の細かな違いの一つ一つが全て学習上のスイッチングコストになってしまう。ヤラレタ。
プロプライエタリな技術でマーケットロックインする従来のやり方は、利益を上げれば上げるほど、どこか悪役になってしまう。でもこれは違う。ワクワクさせるような新しいエクスペリエンス。そして気づくと慣れ、「こういうものだ」というメンタルモデル、気づくと全てがスイッチングコストに…。でもどこか心地いい束縛感。 こういうのやってみたいなぁ。
エレクトロニクス機器のマーケットでの、僕の位置は多分、キャズムのすこし手前ぐらい。HDDミュージックプレイヤーのキャズム*はiPodと一緒に越えた。HDDビデオレコーダーは、すごく気にいってて今も大活躍してるClipOn(SONY)と、キャズムを越えられなかった。越えたのは後に来たHDD&DVD複合機。でも、この位置は大事だよね、キャズムの一歩手前、そしてここを越す瞬間のユーザーエクスペリエンス、メンタルモデルをうまくデザインできたら、きっと、やれるんだろうなぁ、それが。
「キャズム」ジェフリー・ムーア
キャズム ジェフリー・ムーア , 川又 政治 発売日 2002/01/23 売り上げランキング 1,320 Amazonで詳しく見る |
(*このへんの用語の使いかたちょっとヘンだけどね)
最近のコメント